俺とお前はにじさんじGTAをもっと目撃すべきだ/あるいは十日間だけ存在した永遠のメタバースについて

永遠の十日間に、人々は今も恋い焦がれている。

 

 にじさんじGTA、略してにじGTAという企画がある。このブログ風に解説を書くなら「GTA5にマルチプレイヤーMODであるFiveMを導入し、既に好評を博しているストグラにじさんじのみで行ったもの」等となるだろうが、今回紹介したいのはそういう意味でではない。この企画を通じて「ゲーム内経済の面白さ」「システムが導いた行動の面白さ」もそうなら、「ライバーという人々の群像劇の面白さ」のお話だ。

 ひとまず、本腰を入れて各種動画を見る前に共有されるべき事項だ。

  1. にじGTAはプロレスであり、エンタメである。
    いわゆる管理者権限(神と呼ばれる)を持っている星川サラ、叶という二人以外にも、既に同様の企画参加者である一部プレイヤー間では「わざと見逃す」「情報を流す」「何なら所属組織を跨いで教育したり、力を貸す」という事が行われている。なので所謂ガチプレイという事でないのは頭に入れておくべき。

     期間中警察の副所長でありながら謎の全身紫異星人の「パープルメン」として立ち回ったエクス・アルビオは間違いなく助演男優賞モノ。

  2. にじGTAの中で、ライバーはロールプレイをする
    にじGTAの中で演者たちは「プレイ中に知り得た情報」を利用しながら「ロールプレイ」を行う。医者なら医者、警察なら警察、キャバ嬢、タクシー運転手、ギャング、スーパーアルバイター等に基づいたロールプレイ、即ち一定の「演技」を行っている。そこでは上司と部下、医局長と所長、パン屋とその看板娘という「設定」が貫かれる。
  3. にじGTAは、その結果壮大な群像劇となる。
    にじGTAの中で起きる様々なイベントは全てが出たとこ勝負、どういう事がその後どうなるかは誰にもわからない。ふとした時にかけた電話が、切り間違えたハンドルが、通りがかった誰かにかけた一声が、ありとあらゆるものが即興劇になっていく。100名以上の参加者が全て何らかの意図を持ってプレイしており、全てが繋がっている。

こんな所だ。

にじGTAにみるゲーム内経済

 さて、にじサントス(作中都市)の経済について考えてみよう。サーバー設定にもよるが今回の経済はこんな形だ。

  1. ゲームから発行。
    白市民、ギャングの人々はマップ内アイテム・金を所持金や銀行強盗等のミッションをクリアする事でゲーム内で受け取る。アイテムを組み合わせてクラフトする事で価値あるアイテムを生み出す。
  2. ゲーム内流通。
    各々のプレイヤーは「サービス」を提供することで、お金を受け取る。そのお金はまたプレイヤー間でのやりとりとして循環する。警察はたっぷり稼いだギャングをとっちめる事で金が巡るし、医者は人を助けることで金が巡る。
  3. ゲームから焼却。
    にじGTA内で著しく高額なもの、例えば高級車や家やヘリコプターという物は人数やジョブの関係もあるとは思うが管理者(神)とそのサポートである三枝明那やドーラのみが行っている。ここで金が消えるとプレイヤーには還らない。よってゲーム内から金は失われる。

 これらを踏まえて印象的だったのは1、2、3、全てにシステムとプレイヤー両面からの調整があった事だ。というのも「ゲームからの発行」が少ないとギャング側が銃や弾を買えず、車も強化できない。強化先である車屋も儲からないし、ギャングが起こす犯罪がなければ警察も暇だ。
 死傷者も出なければ医者も暇。これに対してゲーム内で「犯罪での入手金額アップ」の調整が入った。それにより激しくなった戦いに各サービスでも値上げ・値下げ調整が入って経済の流動性がアップ。終了の差し迫った終盤では高額商品の値下げが行われ、プレイ内で「入手出来た!」と一つのエンディングが全てのプレイヤーに与えられた。

 これは長期間運営し続けることが目的のゲームであれば「コンテンツの焼却速度が早まってしまう」ことではあるが、僅か10日間に「今日も新しい事が出来た」を積み重ねるにじGTAならば非常に正しい運営だ。

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 更には「ギャング側への強化アイテム・武器提供を手掛けるチーム」が発足。やってる事は悪だがサーバ内では重要な「発行担当」であるギャングを更に加速させた訳だ。また、所謂NPC」の販売アイテムは値上げする事でプレイヤーの店舗が極力利用される事にすることでプレイヤー間の交流も更に加速していく。

システムが導く人々の交流

 にじGTAでは時間経過で水・空腹度・ストレスの値が蓄積されるようになっている。これにより「パン屋」「ピザ屋」「ラーメン屋」などライバーが経営する店をほぼ確実に利用する事となった。先に書いたNPCの販売アイテム値上げも相まって、ピザ屋には野菜スティックを求める人がやってくるしラーメン屋には店長のスマイルを求めて人々が足繁く通う。一人では出来ない仕事もチームでやればより儲かる。そのようにシステムが組まれた結果、人々は自然と集い、そして交流するようになった。

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 「ギャングVS警察」のパブリックイメージとしてのGTAメイン部分だけでなく

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 ゲーム内用語では「白市民」、犯罪に関わらない人々も「お店屋さん」としてにじサントスの物語に関わり続けた。もっと言えば銃を撃たずとも、彼ら彼女らはGTA5を楽しみ尽くしていたのだ。

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 中でも「様々なアルバイトをしまくっていた三枝明那」が夢追翔と2人でコンビニ強盗に及ぶのが素晴らしい。入念な準備と変装を駆使し、警察に全くバレず繰り返す中で二人がバディになっていく様は是非見ていただきたい。犯罪歴があるとなれない「救急隊」に三枝明那が最終的に入り、夢追翔を助けに駆けつける所まで是非。

ライバーという人々の群像劇

 それぞれの意図があり、それぞれが動き、打ち合わせ無しに即興でプレイしている。結果いわゆる「切り抜き」は特定のテーマに沿って作成され、「TRPGリプレイ」のような物語性が付与される。

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 にじGTAの中で最も有名なイベントである「26億円事件」についても「単にギャングと警察が撃ち合った」というだけの話ではない。話は白市民からギャングまで幅広く働くキャバクラにて警察署長のローレン・イロアスと副署長エクス・アルビオが変装の上で豪遊する所から始まる。このキャバクラも「白市民ではギャングほど稼げない」を解消しつつ、各ライバーへの「撮れ高」を提供していた。そこで初日から警察署員に「警察としての仕事」どころか「GTA5の遊び方」まで全て指導してきた二人が現れた。

 この「豪遊」も敢えて高額になりすぎる=今後に何らかのイベントが起きるようにやって、キャバ側も「ぼったくり」イベントが起きるように高額商品の金額はほぼ後出し。結果楽しく食い逃げとなった訳だがそこで「キャストがヘリに乗り込む」「発砲音が聞こえたので誘拐だ」と全員のアドリブが重なった結果、警察全員VS署長・副署長の逃走劇→署長・副署長がビルの屋上から転落し行方不明…から始まっている。

 即興劇は日を跨いで続き、残った警察署員達はキャバクラが真っ当な商売だったか、署長達に非はなかったかを改めて捜査。キャバクラの店長から手打ちも取り付けたものの、署長達はギャング「DROPS」を結成し「大型犯罪を起こす。俺達を捕まえてみろ!」と宣言し…という筋書きだ。

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 このDROPSには同じく「白市民」枠であるメカニックのイブラヒムも合流する訳だが、彼も彼で漠然と続けていたMec崖越えでメンバーを育て上げ短期目標としていた高級車を購入。もとより暇つぶしを兼ね出張修理を繰り返しては様々な人と交流してはいたもののいよいよ暇になったのでメンバーに崖越えを任せて旅に出た所…

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 DROPSの傭兵に出ていた麻薬カルテルエニグマ」のリーダー、葛葉らからの誘いに乗った、という背景がある。彼らはにじGTAで「リーダー格」の集まり。教え子達は果たして署長を取り戻せるのか?という話が、全て即興で構成されている。関わったライバー全員がアドリブであるからこそその戦いには熱が入る。 編集されたそれが「劇場版」と題されているのは誇張では無い。

 一歩引いた視点で見てみれば、与えられた役職(ロール)の中で2度対戦を行っただけに過ぎない。だがそれぞれが状況を利用して精一杯動き、たった10日間だったとしてもその時仲間で、教えてくれて、励ましてくれて…というその感情はだったろうか。嘘かどうかを問うのは少し意地の悪い問だ。なら「舞台の上で放った言葉は真実で無い」と言い切れるだろうか。

 

 にじさんじ所属の、
 アバターを身に纏った配信者達が、
 更にゲームの中でロールに基づき動いていたからと言って、
 それは「真実で無い」と言い切れるだろうか?

 

 にじGTAは幾度となく繰り返された問いへの本質的な答えであったとすら私は考えている。どうしようもなく彼らは、彼女らは、あの日にじサントスで生きていたのだから。

 つまりにじGTAは未だどこか「アバターを纏ってお話をしにきた僕たち私たち」から抜け出しきれない現代のメタバースではなく、間違いなく「メタバース」であった。これが数ヶ月経ってもまだ抜け出せない人々がいる理由の一つだろう。

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 あまり紹介しすぎるのも何だが、もう一つだけ書きたいものがある。それは救急隊の魁星とスハの話だ。

 魁星はにじGTA(6月半ば)の開催時、一番にじさんじに入ってから間もないライバーの一人だった。まだまだこれから繋がりを作っていく時期の彼は、にじGTAの中でも「初めまして」から入っていった。国境を越えた「初めまして」から始まる魁星とスハ。この二人が救急隊として活躍し、時に離脱してバイクを走らせながら語らい…と過ごしていく様もぜひ見ていただきたい。

 もし出てくるライバーを誰一人知らなくても安心して欲しい。なにせにじGTA内ですら、同じにじさんじ所属ですら「初めまして」で始まったドラマもあるのだ。それなら我々視聴者がライバーを知らなかったとしても、にじGTAを今から追ったとて何かしらの過不足はありはしない。

 俺とお前はにじさんじGTAをもっと目撃すべきだ。
 そして十日間だけ存在した永遠のメタバースを今こそ目に焼き付けるべきだ。
 私は心からそう思う。

 

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 最後に。

 「一人のメカニックが、キャバクラで働くピザ屋の看板娘に恋をした」というこの話も、絶品です。

MAYFLASH UNIVERSAL ARCADE FIGHTSTICK F500 Eliteを買う。そして掃除して静音化してレバーを交換する。

中がファストン端子ならもう何でも良かったと供述しており

 驚くべき事に街中のゲーム中古屋さんから「アケコン」が次々と消えている。まあそもそも中古屋さんが消えている。そもそも極めて低粗利かつあっという間に相場が下がるコンテンツ中古、メディア中古は古着や道具のリユースに比べて単価も低く、あっという間に服とブランド品とデジモノリユースショップにみんな切り替わってしまった。まあそもそもゲームのダウンロード比率はあのカプコンでさえ9割なワケで、逆にディスク版の値段が出回らないので下がらないなんて事にもなっている。ただでさえ趣味の物なのに更にその中でも趣味の者しか買わない訳だ。

 さて、中古屋さんは良いとして中古アケコンは何処に消えたのか?これが実は非常によく売れている。USBで刺さりさえすればPS3用だろうがXbox360用だろうがSteam側でカバーして何でも動かしてくれるので、Steamでゲームをする人からすれば過去20年の中古資産が全て購入対象な訳だ。あと多分ブリジットのケツ目的だと思う。

 という理由で今更何かサクっと買えるものがあるか探したらレバーもボタンも三和かつ改造も楽そうなアケコンが1万円で売ってたので買ってきた。ありがとう駿河屋。

ボタンをバラして掃除して静音化する

裏のネジ外して押すと簡単に取れる。下についてるのがファストン端子。

 で、買ってきて早速バラした。アケコンの構造は非常に簡単で、板にスイッチとレバーをネジやツメで固定してあるだけだ。そしてそのボタンもやはりツメで止まっているので、ツメを押すと簡単にバラせる。

この中央の白を押す為にボタンを叩く。すると外周が底打ちしてバチバチ鳴る。

www.sengoku.co.jp  分解したついでに千石電商で買ってきた防振ゴムを仕込む。これで底打ちのパチパッチ音がかなり小さくなり、ボタンの戻りも僅かに早くなる。今回0.5mmの物を買ったが、人によっては1mmの方が好きかもしれない。悩むぐらいならどっちも買えば良い。アケコンのボタンはファストン端子タイプなら簡単に交換できるし1個300円程度なので、いくら台パンしても安心。自分で壊したものぐらい自分で直せるようになりたいよ。俺は。というわけで交換用ボタンは下記よりどうぞ。

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レバーセイミツのボタン三和が最強だと信じているので交換する

5ピン型で助かった。ファストン端子は面倒だ。

 さてレバーだ。ボタンと違ってレバーはちょっと面倒くさい。というのも「アケコン本体とレバーは何でつなぐか」で選ぶものが変わるからだ。まず接続方式で、ファストン端子型と5ピン型がある。もしアケコンの本体からレバーに向けてケーブルが8本もついていたらファストン端子型。5ピンで繋がるのは5ピン型だとか基板型などと言われる。画像のは5ピン型。だいたい5ピン型なら三和でもセイミツでも差したら繋がる。特定のレバー用にケーブルがギリギリの長さで配線されていた場合は別途ケーブルを買ったり工作が必要かもしれない。

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というわけで今回買ってきたのはセイミツが去年出した新作レバー。しかしここでもう一つの面倒事がある。「コントローラの鉄板に空いてる穴」と「レバーにくっついてる金具」の組み合わせによってはレバー側が鉄板側に固定できないことがある。どういうことかと言うと

片側の穴に合わせたらもう片方が全く通らなくなってしまった。

 この通りだ。ここでとれる行動は3つある

  1. アケコンの鉄板側を破壊してネジが通るようにする
  2. レバーの金具を破壊してネジが通るようにする
  3. レバーの交換用金具が数百円で売ってるので買ってきてネジが通るようにする。

再生の為の破壊を始めるには今年の夏は暑すぎるので大人しく交換用金具を利用した。

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 どんなアケコンも「◯◯を三和レバーに、セイミツレバーに変えてみた」というレポートはある。だいたいそういうレポートには「三和レバーにする時のベースはこれ」だとか「セイミツの物がそのまま使えなかったがこのベースでくっついた」と添えられている。もし見つからなかったら?どうせこの板は安い。誰もいなければとりあえず買ってみればいいと思う。そして交換したレポートを残すべきだ。

クリアのレバーの台ってなんだか嬉しくなる。

 完全に取り付け切ってしまう前に一度PCに繋いで、上下左右ちゃんと入力がされる事を確認したらネジを閉めて終わりだ。慣れれば交換に5分もかからないと思う。

 

 そんな感じでアケコンの簡単な改造レポートをお届けした。お陰でSteamのレイストームやGダライアスが非常に快適に遊べている。自転車のパンク直しより簡単なので、もしハードオフPS3Xbox360用のアケコンを見つけたらまともに動くまで試してみるのもいいだろう。材料費5000円ぐらいで直れば下手なゲームより楽しく工作出来るはずだ。

Xiaomi G Pro 27iというモニタを始めいろいろ買ったので神という話をしにきた

画像は渋谷のXiaomiPOP UP STOREに乗り込んで入手した時の物

 諸君らはXiaomiというメーカーを知っているだろうか。そうだね。炊飯器や体重計を売ってくれる傍らなぜかスマホ、イヤホン、タブレットも売ってくれる不思議なメーカーだ。彼らは「ハードの利益率5%」を約束し、買ってみたら案内ええやんを提供しつづけている。

 さて去る2024年7月25日、そんな彼らがちょっといいゲーミングモニタをリリースした。もともとFHDまたはウルトラワイドモニタで神がかった完成度と高校生でも手が届く値段で天下無双と言った状態だった所、彼らに似つかわしくない5万円というお値段でのリリース。

 して、このモニタの何が凄いかと言うと下記の3点をきっちり抑えてきたという点である。

  • 量子ドット
    今までの液晶モニタは「R(あか)G(みどり)・B(あお)」の3つを表示したシートを後ろからガッとLEDで照らしていた。が、構造上どうしても発色上赤と緑が弱いという弱点があった。カラーパレットを見てもらえばわかるが赤と緑は混ぜれば黄色。すなわち「太陽」から「人間の肌」そして何より大事な「爆発」「炎」に至るまでもっとやれる所やれていなかったわけである。それを更に強化する超やべえシートを差し込むことで今までになく豊かかつ鮮やかな色を実現。これは2022年からの超ハイエンドテレビ・モニタに採用されていたが、全然普及価格帯に降りてこなかった。
    今までの話が全然頭に入らない人は「肌色がもっとえっちになる」とでも思っておけ。
  • miniLED直下型
    古いiPadあたりを思い浮かべてほしいのだが、マンガを読んだりWebを表示してる時に「なんだか端が暗いな」と思ったことはないだろうか?あれは画面端から強力なLED照明で照らして、それを拡散させてなんとか均一にならないかなと人類は努力してきた。このLEDを上下左右からガッと照らして「均一になっ…たかもしれない!」ぐらいで人類はやってきた訳である。黒一色の画面でなんだか画面端だけボヤっと明るいと思ったことはないだろうか?アレが端から拡散方式(エッジライトと言う)の限界である。
     それを「画面の端でなく!画面の真裏からビカビカに照らす!」とやったのが直下型のminiLED方式だ。端から照らす方式じゃないから暗いところが出ない。もちろんハイエンドテレビ・モニタにしか採用されていなかった贅沢な仕組みだ。当然たっぷりLEDを使ってるので画面の明るさも既存のものよりグッと上がる。
     今までの話が全然頭に入らない人は「肌がもっと眩しくなる」とでも思っておけ。
  • HDR1000
    ここまでで「今までのものより鮮やかっぽい」「今までのものより明るいっぽい」という所まで理解できたろう。これを突き詰めると「黒では全く後ろから照らさない」「爆発はめちゃくちゃ照らす」のような明るさや鮮やかさの動的な制御が可能となり、より高コントラスト…つまり「鮮やか」に出来るわけだ。この鮮やか制御されたコンテンツを「HDRコンテンツ」といい、ゲームや映像作品でも近年増えて来ている。それの1000だ。どうだ凄そうだろう。
     全然頭に入らない人は「黒が引き締まって肌がもっと鮮やかになる」とでも思っておけ。

 で、これらを採用したモニタは大概10万円はくだらなかった。それを5万円で出してきたというのが驚き。若干解像度が低い(そういう10万円のモニタは4KだがこれはWQHD)のだが、人類は2030年代まで4Kでゲームなど出来やしないと覚悟している私のような人間にはこの上なく丁度良い。

 今回予約時点で売り切れてしまい入手困難であり、EC専売の為もう無理かと思ったのだが渋谷に日本で唯一のXiaomiのストアが期間限定でオープンしており、そちらに発売日当日乗り込んでみたら「明日、1台だけ手に入る」と聞けたので翌日開店から突撃し無事購入出来たといった次第だ。

 良い。非常に良い。何もかもが良い。本当に良い。是非買え。

オタクはPCの前に10時間座るだろという究極の割り切りイヤホン

 ところで「イヤホン」に求めるものは家の利用と出先の利用でさっぱり違う事に気付いた。出先で欲しいのはノイズキャンセリング能力と、適度な味付け能力。その上でとりあえず何にでも繋がれば良いという汎用性。それで今私はソニーのWF-1000XM5を使っているわけだが、家となると話が違う。

 家で欲しいのは「何よりも映画だろうがゲームだろうが耐える長時間スタミナ」「汎用性を捨ててでも絶対に特定の機器と繋がる安定感」「絶対的な遅延の無さ」、というわけでINZONE BUDSを導入した。

 このイヤホン、Bluetooth接続が出来はするがごく一部機器に限られている。メインは付属のUSBアダプタで行う。独自ワイヤレス通信のお陰で音ゲーに耐えうる遅延の無さが実現されており、また2024年現在のハイエンドモデルであるWF-1000XM5と同じドライバー(音を鳴らす本体の部品)が採用されているのでゲームや映画鑑賞にも使えるしっかりとした音がなる。更に連続使用公称12時間。ノイズキャンセリングONにして実用すると10時間程度使える。「充電が切れたからちょっと使えないな」という煩わしさは全く無い。非常に満足している。

 が、持っている本体の右側に充電不良の症状が出てしまった。ので

 当然2つ目を購入。これのない人生は今のところ考えられない。オススメ。

移動中も家でも極上爆音上映するヘッドホン

 ところでSONYは今年不思議な新作を出している。SONYの音響機器は一番上が1000X、そこから900、800、700と数字が下がっていくのだが、今年出たのはその中でも900を冠する「WH-ULT900N」だ。既にWH-1000XM4を使っているのだがイヤーパッドがへたれて来た上、最新のWH-1000XM5はなんと6万円もする。流石にちょっと躊躇した所、この3万円のヘッドホンが出た。ので発売後すぐに買ってみた次第だ。

 してこのヘッドホン。凄い。「キラキラした」「澄んだ」「素直な」のような形容の対極にいる。箱にも書いてあるが本機は「重低音体感」ブランドであるULTシリーズのヘッドホン、ULT WEARという名前だ。その「重低音体感」に嘘偽りは全く無い。何がって重低音モードにすると本体がゴリッゴリに震える。頭蓋骨も揺れる。「完全ワイヤレスイヤホンでキラッキラした音に支配された人々を絶対に酷い目にあわせてやる」とソニーの覚悟を感じる。頭蓋骨で。

 「低音」の話をすると想像されるのは時期を問わず公道で見かけるボゴボゴ鳴らす騒音車だろう。しかしこのヘッドホンは違う。持ち上げる低音はそのボゴボゴボブボブ部分だけではない。ドラムもベースも持ち上げる。なのに1000Xシリーズ譲りの伸び伸びとした高音やボーカルも完備している。潰れていない。低音モードのオンオフや強弱は本体のボタンでサクっと切り替えられるし、オフにすればいつものソニーらしい強力ノイズキャンセリングヘッドホンとしても使える。

 つまりこのヘッドホンは「極上爆音上映”も”可能」「好きなコンテンツにガーリックバターをかけること”も”可能」というだけで、非常に広い汎用性を持っている。普通に聞いてから強弱を調整したらどう楽しくなるのか。という「音で遊ぶ」為のヘッドホンである。これで映画やドラマ、ゲームを見ると没入感がハンパないので是非楽しんで欲しい。

 バッテリー持ちも非常に長寿命で、東京⇔札幌間の小旅行+一週間の使用で残り20%という具合だった。本当に頼れる。またこの「音で遊ぶ」の心遣いは他にもあり、Bluetooth機器2つに同時につながって、例えばスマホタブレット間を何の操作もなく行き来出来るようになっている。パソコン⇔スマホ間も同様。つまり被りっぱなしでスマホの音楽を止め、パソコンでYoutubeを見てもそのまんま音が流れてくれるのだ。マジで便利。 

 というわけで2024年7月現在めちゃ便利に使っている道具の話をした。買え。本当に便利だから。プライムデーに書いたら本心から書いてなさそうに見えたので今回わざと遅らせました。それでは。

そしてアサシンクリードヴァルハラを遊んだ

 アサシンクリードヴァルハラをクリアした。プレイ時間は51時間。

さて、物語の話をする前に決まってシステムの話からしているわけだが今回は敢えて「良く出来ている!」と思ったオデッセイからどう変えて、結果それはどういう体験となってしまったかをつぶさに述べていきたい。

 

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前回記事はこちら。

悲しみのピタゴラスイッチ

スフィア盤の数が500個ぐらいある。

 ヴァルハラはオデッセイ同様にハクスラとビルドのゲームになっている。なっているがまず成長がツリーの形式ではない。スフィア盤。そのスフィア盤も「レベルが上がったりイベントすると2点貰えて、その2点を割り振る」という形式。そして眼の前に広がる膨大すぎるスフィア盤。元来ゲームであればこの手のものは自動で振っておいて「特化ポイントを振ろう」程度なわけだがこのゲームはそんなもんじゃない。全部やらせてくる。

 とするとまあどうなるかと言うと、まずその煩雑さに呆れて「割り振り」をしなくなる。UBI側も作った後に「やっべ」と思ったのかスフィア盤のド真ん中に適当に振り分けボタンを作ってくれている。レベルが上がる→A押して強くなる。何が変わったかは知らん。まあそんな感じだ。

スクショ忘れたのでカラドボルグ貼る

 次に武器。オデッセイの時は「これと!ここが強い武器です!あと+1エンチャント出来ます!」という物だったがヴァルハラは「1個だけ何か特性があります。あと3枠は好きにしてください」というものになった。育成コストも軽くは無いので武器は「この武器が強い」よりまず特定のモーションで選ぶものになる。ここはRPGというよりモンスターハンターの感覚だ。結局私は最初から最後まで鎌を使った。スクショはないが防具もだいたい同じである。

 アクションゲームに馴染みのない人に「モーションで選ぶ」を説明すると、「遅いけど範囲攻撃が強い」とか「一回一回の動作が短いから差し込みやすい」や「リスクはあるが一回一回の行動が強い」のようなものの事をいう。今作は範囲攻撃の鎌とリーチ&手数の槍が本当に強い。斧や剣を持つ気にはならないぐらいに。

 とまあここら辺の話で勘のいい人は察するだろうが、このゲーム一度スタイルが決まってしまうと装備変更の必要性が極めて薄くなるのである、前作のように自分と敵のレベルシンクが無い。だからゲームからの圧がない。強化にも当然ゲーム内リソースが要求されるわけで、他の得物を持ってみようという気はまるでなくなる。

でけえ砦攻めるのは楽しい。

 するとリソースの獲得だが、フィールドに点在する居住地を襲撃する事で手に入る。その居住地に特色があるかと言われるとそんなことはなく、乗り込んで大戦争が始まるようにみえるもののだいたい1つの町に4つぐらいある宝箱を開けると「撤収だ~!」となって終わりだ。メインストーリーでイングランド平定の話をやっているからしょうがないが全滅でなく「略奪」なので、そのうち宝箱に走っていって宝箱を開けるのに邪魔な敵を数人排除するだけになる。オデッセイの場合はエピック装備が入っていたから良かったのだが。

 

フィールドに宝は点在しているものの。

 武器や防具、そのエンチャント自体に対した魅力が無く「まあ手持ちのものが強くなれば良い」となるとフィールドに点在するアイテムも「別にいかなくていいか」となってしまうのだ。武器の強化に加えて「グレード」の話もあるのだが、リアルマネー武器に加えて限定版武器が上から2番めの「極」で渡されるしDLCにいかないと最高位の「天」は開放されない。ということは「極が1セット」出来れば膨大な世界は途端に「別に使わないもの」に溢れた退屈なものになってしまうのである。

 つまりここまでの話を総合すると「オデッセイがかけつづけた圧は長時間やらせるものとしては正しく、それらを変更したがゆえにフィールドの価値はまるでなくなってしまった」という事になってしまう。事実そうなのだからしょうがない。

今回の結社さんたち

 オデッセイの結社(前作では立場が違うがコスモスの信徒という名前だった)は「地方での出来事の末に出てきやがる結社!!」という感じで盛り上げるボスだったのだが、ヴァルハラの方は違う。置いてある手紙を読み、その次にまた別の地点の手紙を読み、やっと判明したら殺す。殺すと二言ぐらい話しては主人公に「お前はヴァルハラ行けねえわ」って言われて終わり。そもそもメインストーリーに大して「古き結社」は関わっておらず、主人公の兄貴が帰ってこないから返せという事件にちょろっと絡んでいただけなのだ。

 なのでそもそもが「エイヴォルVS結社」という構図ではまるで無い。何よりヴァイキング自体が別に来なくてもいい土地で暴れまわる侵略者なもんだからボコられて当然ですらある。DLCの話しも含めるとヴァルハラ行くぞヴァイキングにアルフレッド大王を筆頭にしたキリスト教、西側のドルイド教がいるわけでその中に「古代人教」などと出されてもまず題材の食い合わせが悪いのだ。

ロケーション活用と追従・移動が更に地獄を生む

本編のバトルはいちいちイベントイベントしてて非常に良い。

 さて本編の話だが、まあ面白い。異邦人として諸国を巡り、その土地ならではのトラブルを解決し、そして時には剣を交える。自然解放でなく2エリア→1エリア→と開放されていき、既に同盟を結んだ地域との連携作戦になっていくので大河ドラマ的になっていく。ここの試みはうまくいっているのだが、いかんせん「まーた頼まれごとするんだろうな」という感じでプレイヤー側の動機も主人公にとっての動機も薄い。加えてありとあらゆるキャラクターが「付いて来て」「向かいましょう」で会話をしてくるので「話を聞くためだけに操作させられているパート」がゲーム内の少なくない割合を占める。

 そして地点についたら何か会話をして、ちょっとバトルが入ることもある。そして移動。移動しながら会話。クエスト完了。次の場所は2km先。

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 つまりどういうことかと言うと、運転手ゲームと過去に私が批判したGTA5と全く同じ欠陥を抱えてしまっているのである。しかもこちらは問題解決の下準備の為に移動してはおしゃべりなので何かビジネスをしたという気も解決したという気も起きない。これがあまりにもったいない。前作オデッセイでは主人公がムキムキと、時に目をかっぴラきながら駆けていたのにあまりにもったいない出来だ。

ヴァルハラなんて無いんだよ。と告げるための旅

生きてて初めてウィッカーマンに火を付けた気がする

 ただし物語はちゃんと面白い。「弱気な後継ぎが王になるまで」「ヴァイキングが略奪でも満たされなかったなら」などが、ヴァイキングイングランド側の文化紹介を兼ねており楽しく遊べる。パリ包囲戦ではモンジョワモンジョワ吶喊するフランク兵と燃え盛るパリで戦えるのも良い。書き出すと止まらないがアルフレッド大王の隠遁生活の所とかも本当に良い。

今回も神話編がある

 今回の主人公、エイヴォルは明確に北欧地域に居た古代人「オーディン」の知識を強く受け継ぎ、暗殺の度に内なるオーディンの価値観と今の自分との戦いがある。だから霊薬で改めてオーディンだった時の自分の記憶と後悔を垣間見る必要がある。イングランド平定編と並行して走るオーディン編はDLCでの火の巨人スルトとの決戦で最高潮を迎えるし、神話が「かつてあったこと」として扱われている以上彼らは滅びに向かう。

 だとしても「彼らは生きていたのだ」と、神話の装飾をした上で「アサシンクリードアサシンクリード」をやりきった訳だ。オーディンとして。当事者として。その試みは人によって評価も分かれるだろうが、私は今回の神話編は面白かった。まあ問題はそれをやるためのパッケージに1万円の値札がついている事だが。

肉と酒と女と戦。それだけが続くヴァルハラ。

 今回はアサシンクリードシリーズの中でも特にオーパーツや古代の遺物の絡みが物語の中で少ない。少ないが極めて効果的な使われ方がされている。結社の人間に「目覚めさせられた」義兄シグルドに連れられてイングランドからノルウェーに戻ったエイヴォルが目にしたのは洞窟の奥に眠るスーパーコンピューター

 それに繋がり、無限に広がる仮想空間で目を覚ますとそこはヴァルハラ。死んでいった人が居てうまい飯と酒があって、門が開いたら殺し合う。ただそれだけの世界。エイヴォルはイングランドで知った。様々な人々が、様々な未来を思い描き、そして血を流して死んでいったことを。一つ事を成し遂げるには人の生は短すぎることを。ならば言わねばならない。兄上、エインヘリャルになるには早すぎる。そして信じたヴァルハラがこんなものならば――

かつての自分の生、そして望みに従えと叫ぶオーディン

知恵も栄光も力も要らない。それ以外の今が欲しいから。

ヴァルハラなんて無かったから、オーディンと共に彼女は旅をした。

 最終章に至るまでの流れは「一人の主人公の物語」としてエツィオに勝るとも劣らないものを描き切れていた。DLC+2年の歳月が必要であったが、それに見合う終わりだったと思う。

 

 

 アサシンクリードヴァルハラは「オデッセイは一つの正解をだしてしまったんだな」と過去を懐かしみながら、それでも今の変わり方は最悪ではない事を示す妙なタイトルである。シャドウズ発売までまだ数ヶ月あるのだから、ここまで読んだなら是非全部入りを遊んで欲しい。今から次回作が楽しみです。

 

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 次回のゲーム記事は二ヶ月ぶっ通しでアサクリ4本やったのでなにか落ち着けるやつにします。それでは。

アサシンクリードミラージュは全然原点回帰じゃない。

どうでもいいけどこれで1以前の時代4作目です。マジで?

 世間が引き続きうるさいのでアサシンクリードミラージュをクリアした。UBIへ5月末に「ヴァルハラだけ何故かCD Keyが要求されてDL出来ない。WebからもランチャーからもDL出来ない。マジでなんとかしろ」とサポートに問い合わせて、2度返信が来てお待ち下さい状態になってもう半月が経過している。経過したせいでオデッセイとミラージュが終わってしまった。私はとても悲しい。UBI…お前アブスターゴだったのか…?

 というわけで今日はアサシンクリードミラージュの記事です。

別に全然原点回帰じゃないです。

一回UBISOFT PRESENTSって出てからタイトルまで20分ぐらいあって笑う

 巷でやたらめったら「原点回帰」という言葉が使われているが、別にそんな事は無いんじゃないかな。というのがまず終えてみての感想だ。まず暗殺一つとってもカメラがぐぅっと近づいて剣がギャリンギャリン言うカウンターじゃなく、パリィボタン押して弾ける攻撃が来た時に弾き。パリィ不可の赤攻撃は無敵の回避入力、アビリティ取ったら回り込んで背中に2コンボ。舞うような戦い方は非常に良いが言うて原点にそんなのがあったかと言われると、ない。というか連続暗殺(コンボキル)が無い。

 では本作何があるかと言うと、敵にテイクダウンした後マジで良くわからない方向にフォーカスが働いて時間内にボタンを押すと確殺のナイフが飛ぶ。あとフォーカスという暗殺ゲージを溜めると、時間停止→殺したい相手にカーソル合わせてボタン押す→瞬間移動して全員を一瞬のうちに刺し殺す超必殺技が実装された。

 これオデッセイにあったよね~

www.ubisoft.co.jp

 

 ではない。元々スプリンターセルシリーズの「コンヴィクション」で搭載された「マーク&アクション」というシステムが元ネタだ。割と表現としては劣化していて、格好良く走ってバッサバッサと連続暗殺(イメージとしては龍が如くの武器ヒート演出)するかと思ったら重低音を響かせながら瞬間移動してしっとりとサクッ…サクッ…と刺していく。残念ながら2以降のダブルアサシンもコンボも無いままなのでこれは頻繁に使うことになる。

 加えて極めて強力な武器としてバーサーク吹き矢がある。撃たれた相手は錯乱して市民や味方に襲いかかり、しかもその後死亡する。これ一つで相手の陣形や注目を崩し、難易度を一気に低下させる武器なのだがこれは2でブレードポイズンとして出てきた後、更に後の作品でポイズン/バーサークダートとして出てきたものだ。

 かと思えば便利グッズ類に物語、特にダヴィンチ(2)やベル(シンジケート)のような物も無い。ゲーム進行で手に入るポイントを使って支部の発明家に話しかけてサークルを開放するだけ。ここは逆に淡白。未来の要素や他ゲー要素を取り込んで置いて、かと思えばその時に付随していた広がりが無い。

 街の皆さんの力を借りて…戦う!というような依頼こなしましょうねアピールがゲーム内であるものの、やることは基本的にスリで片っ端から通行人の財布盗んで質屋で換金してそれで歯車を買って前述のナイフと吹き矢を強化すればだいたい終わりである。せっかくアサシンと支部が復活したが仲間のアサシンを呼び出す(BH)のようなものも無く、手配度については手配書を剥がせばすぐ下がるのでコインの使用用途としては微妙。メインクエストを金や特殊コインでスキップするのはどちらかと言えば原点たる1の話でなく、元貴族であるエツィオの振る舞いだし、元ストリートチルドレンの主人公がやる事じゃ無い絵面なのも「原点回帰」と言うには盛大に引っかかる。

所で1では「尋問」つってボコボコにして聞き出していた。尾行は別作品。

 ところで立ち話している人達の中に混ざって不可視扱いとする「ソーシャルステルス」についても2からの導入で、それはあまり効果的に機能していないように見えた。路地が狭く番兵は多く、そして立ち話している人は少なく全力で走っていると人は驚いて群衆判定が解けてしまう。結局屋根伝いに移動してどこかしらの東屋に入るほうが速いのだ。

 と、書き出すとミラージュはかなり「シリーズの原点」とやらとは別のゲームに見える。調査してターゲットを絞り込む中で更に人殺しを重ねるのは別に回帰しなくてもずっとシリーズを通してやってきた事だし、「場所が中東のバグダッド」「支部と本部からの指示でやる」の感覚ぐらいしか別に原点と共通してないのではなかろうか?

そこは別に原点回帰しなくていいです。

3から割とどこでも登れるようになったのに。

 さて、それでは原点回帰してないのか?と言われるとまあ実際は原点回帰している。どのあたりがと言うと「全然ドアが開かないし、全然登れない」のだ。3でどこでも登れるようになり、シンジケートのロープランチャーで一気に屋上に登れるようになり、ついにオデッセイではまるで掴むところのなさそうな銅像や石像にまでスタスタ登れるようになったアサシンクリード。それは自由なルート構築を可能にしたが、逆に「見つかるとものすごい数に袋叩き」以外の難度設定を難しいものにしていた。

 それをミラージュではサッパリ登れなくした。壁に登るようの出っ張りや輪が無い限り、潜入する系のエリアでは登れない。タカで見渡しタカの目で見渡し、ロックのかかったドアから逆算してどこから入れるかを推理する必要がある。窓も綿密に閉まっており、中からかんぬきを破壊するほか無い。

 実際、それは「暗殺対象の居る拠点攻略」では非常によく機能している。オープンワールドでありシームレスでありながら警鐘の鳴らない限り敵が寄ってくるのは声の届く範囲で、もし見つかってしまったとしても4~6人を相手にするだけで済む。鍵を手に入れ先に進みまた次の手を…と考えていく感覚はこれまた前述のスプリンターセルであり、そしてパブリックイメージとしてのシンジケートまでのアサシンクリードの再現に成功している。

 が、問題はビューポイントの間隔やシンクロまでの道のりだ。馬を呼び出しても高速移動できず入り組んだ道やジグザグに屋根の上を歩かねばならない事が多々あるのにビューポイントの数が密度に対して少なく200mから500mの移動が連続する。加えてビューポイントに登るのもやはり一筋縄で行かなくなっており、どうやって登るかをスクリーンショットにある通り考えねばならない。開放しても億劫、開放するまでが億劫となっているのは残念である。

猫は毎秒撫でさせろ。

 拠点攻めの中で投げナイフで敵を即死させ、それを見つけて寄ってきた敵兵にバーサーク矢を当てて錯乱させ、混乱が生じた所を暗殺し、更に投げナイフでコンボ。ゲージが溜まったら先の瞬間移動で一気に殲滅。原点回帰というよりは存分に後世のエッセンス入り。戦い方はほぼサム・フィッシャー。アサシンクリードミラージュはそういうゲームだ。

「ヘビ」路線は継続しており標的の名前がバハムートとか出てくる。かっこいい。

 さて肝心のストーリーラインについてだが、「標的の事を知る」「そのうえで殺す」という所についてもやはり原点回帰してしまった。シンジケートであれだけ標的の「社会に及ぼしている良い影響」の話もやっていたのに、どれだけ悪徳かの話しかしてくれない。その上主人公のお悔やみタイムも概ね侮蔑とジーニーへの恐怖で埋まってしまっているため、しんみりする感じもない。せっかく長い調査過程があるのだからここだけは本当にしっかりして欲しかった。

 別にシンジケートに限らずで、オリジンズの『スカラベ』ことタハルカの二面性や暗殺を子供に目撃されてしまう流れや、子を失った母親である『ハイエナ』のような話がついてこなかったのが残念でしかたない。そこは原点回帰しないで欲しかった。

 というわけでアサシンクリードミラージュの話は以上だ。クライマックスでは何故この物語の名前に「ミラージュ」と付けられたかしっかりやっているし、その結末も「ヴァルハラ」の前日譚として非常に良くできている。特に最後のワシからの一撃が印象的だった。

 

 

 出来ればUbisoft+でちゃんとヴァルハラをシーズンパス込みでやりたいのだが、放置されるようであれば次は何かしらのゲームをやろうと思います。それでは。

アサシンクリードオデッセイについて/レベル制というエデンの果実について

「狼は俺の父親だ」からのメインテーマ好き

 世間が引き続きうるさいのでアサシンクリードオデッセイをクリアした。このゲームへの違和感を言葉に出来ないまま途中で投げてしまい、ここからヴァルハラまでプレイ出来ていないので5年越しのクリアとなる。

 本作はオリジンズからのRPG路線作の第2作。そしてナンバリングで言えば4、外伝を含めればローグ以来のフリーラン中の海戦を復活させた意欲作である。舞台としても今までで一番旧い古代ギリシャが舞台だ。

 今回、クリアすることでその違和感をようやく言葉に出来るようになったのでその記事を書く。素晴らしい古代ギリシャの冒険そのものについては既に他の人が語っているだろうからあらすじをだらだら書くことはしない。

あの日ベセスダとバイオウェアに成りたかったアサシンクリード

行動したようにネームドの生死が変わる

 アサシンクリードオデッセイにおいて「ロールプレイ」の演出は、バトル・シナリオ面両方で成功している。何の気無しに「ここで人を殺すことはない」と取った選択で島全体が疫病に包まれ、よくも崖から落としてくれたなと剣を抜けば二度と父と言葉を交わせなくなる。そのような重要なメインクエストの選択肢に始まり、旅の途中での小さな頼み事からの小旅行。そしてくすっと笑えたり切ない終わりを迎えての次の旅へ。

 バトル面でも各種アビリティ・熟練度システムで「ビルド」が組めるようになった。ひたすら毒と暗殺を尖らせるもよし。槍と弓で戦うハンタースタイルも良し。これにランダムドロップの装備・その刻印(武器毎バフ、エンチャント)も相まってプレイヤー毎の主人公像・主人公スタイルに合わせたロールプレイが出来る。

 アサシンクリードオデッセイが「異色作」と言われるのはまさにここにあって、今までの作品はあくまで「歴史上に居たとあるアサシンの人生の追体験」であった為に変えられなかった振る舞い、変えられなかった信条を完全に崩している。が、身も蓋もない事をいうとこれは「アサシンクリード」というIPとシステムを使った単なるRPGになってしまった事も意味している。

 オープンワールドRPGとしてのバイオウェア作品、ベセスダ作品、CDPR作品に非常に色濃く影響を受けている、と言って差し支えない。アサシンクリードオデッセイは長年続いてきたオープンワールド作品として、彼らに挑むことを決めた。というわけだ。

 アサシンは自ら手にかけた者ですらその死に際して向き合った。が、今回の主人公は最後までオデッセイを続ける独りの「ワシ使い」で居続けた。明確に「アサシンクリード」として戻ってくるのはシーズンパス購入者用DLC「最初の刃の遺産」ぐらいである。

オープンワールドにおけるレベル制というエデンの果実について

敵対組織の持つオーパーツで槍をやり直す主人公。

 ひとしきり褒めたので違和感、そしてその正体である「レベル制」について話していきたい。

 さて、アサシンクリードの話としてでなく一般的なRPGの話をしよう。レベル制である場合、それは「〇〇というエリア、◯◯というダンジョンの敵は手強い」という足切りの役目と、「もう◯◯レベルなのでここらへんの敵は楽勝」という褒美としての役目がある。そしてプレイヤーのレベルが上がったとて、装備も整っている前提の調整なら装備も揃えねばならない。これを特にMMORPGの界隈では「装備更新」と言う。

 しかし「〇〇レベルなのでここらへんの敵は楽勝」というのには少々問題がある。該当エリアのクエストは、適正レベルの時に適正なクリアをしない場合プレイヤーに何の魅力もない報酬が渡される事になってしまう。理想としてはプレイヤーにとって普遍的な価値の固有アイテムか、レベルに応じた係数でもって報酬額を増やす事でいつ挑んでもいい状態にするのが良さそうだ。

 バトルだってそうだ。プレイヤーばかり先に強くなられると、適正レベルでの戦闘はごく一部のエリアでしか起きないことになってしまう。特にオープンワールドならこれは致命的で、敵のレベルも一緒に上がるようにしなければならない。

 ここまで読んで妙なことになった事にお気付きだろうか。
 レベルが上がる
 =敵のレベルも上がる
 =報酬も上がる
 =扱う数字が緩やかにインフレしただけで何も体験の上で変わっていない
  どころか、装備のレベルだけは変わらないので装備更新しなければならない。

 つまりプレイヤーはレベルが上がったぞ!何かがちょっとだけ強くなった!と緩やかな上昇に喜ぶ。引き換えに敵がまた強くなり、それに対応する装備を揃える必要がある。最大レベルが99なら98回装備更新を楽しめるというわけだ!

 はっきり言おう。アサシンクリードオデッセイは本当に98回装備更新するゲームだ。

 経験値は現在のレベルに対し「必要経験値の◯%」が払い出される。敵を倒した時の報酬である装備の売値も、素材も、数字の形をしているが実際はインフレ率に応じた払い出しがされる。相手する敵の硬さもやる事も変わらない。何故なら自分のレベルと相手のレベルはずっと同じだから。

 これが楽しいのかと言われると、悔しいことに楽しい。常にゲームからの外圧がかけられ続け、何かをする必要が常に生じる。報酬は報酬で有り続ける。何やら必殺技が増えたり、何やらダメージ効率がこの旅で上がったらしい。何故ならレベルアップ画面で操作をしたから。そういう確かな事実があまり変わらない体験の上で、積み重ねてきた実感と数字だけが上昇していく。

 更にアサシンクリードオデッセイはここに一捻り加えた。町で「狼倒して来てよ」と受ける小さなクエスト報酬も、何十人と兵士が守る厳重な砦攻略報酬も、何ならメインクエストの進行で手に入る報酬すらも、全て価値が同じなのだ。これなら徒労感は無い。何をやっても現時点で「価値がある」と認識できる報酬が渡されるのだから。

 つまりだ。アサシンクリードオデッセイは「レベル制」を乗りこなし、その結果本当に特定の所でしか手に入らないユニーク装備以外、メインクエストから文字通り使い捨てのインスタントなクエスト、ランダムエンカウントの野生生物から海上での戦いに至るまでその全ての価値を同じにする事に成功した作品である。

 

3本のオープンワールドゲームがたどり着いてしまった場所

画像は歴史に忠実な火炎放射器搭載船で相手を丸焦げにするシーン

 ここでUBI製でないゲームについて2つ触れなければならない。

 一つは「バットマンアーカムナイト」だ。

cr.hatenablog.com

 このゲームはオープンワールドでの「やること」を完全に物量作戦で押し切った。強化して、死ぬほどマップ上にバラまかれたビーコンをクリアし続けるゲームである。それも一つオープンワールドとして正しい。無数のクエストをこなすと最後にコスチュームなりイベントなりが見られる。そのために本当に100個クエストを投げてくるゲームだ。

 そしてもう一つは「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」だ。
 ブレスオブザワイルドでの実質的な成長というのは、実は数えるほどしかない。

  • 四神獣撃破にまつわる英傑スキル
  • 蛮族・古代装備
  • 祠でのスタミナ・体力アップ
     →に付随するマスターソード
  • 一応インベントリ拡張としてのコログ(成長と言うかは疑問だが)

 それで終わりだ。では何故あんなにも夢中になって遊べたのか。それは常に「失い続けるからこそ得続けねばならない」という圧がゲーム内でかかり続けていたからだ。まあ実際はライネルをヘッドショットで楽に殺せてしまえばもう何も必要ないことに気付いてしまうわけだが、まあそれは置いておこう。

 圧倒的物量、汎ゆるものが失われ続けるシステム、そのどちらもオープンワールドとしての正解だ。そこにアサシンクリードオデッセイは「全てに価値があり、そして全てが遊べば遊ぶほど今の手持ちが無価値になるシステム」で新たな正解を出してしまった。 しかもここに膨大なクエストを更に通り越した「無限クエスト」もある。ボリューム問題を98回の装備更新、それのためのリソース回収で上昇”感”で遊ばせていくのだ。

違和感の正体はいつまで経っても刺さらないブレード、
増えていく様々な吹き飛ばし方のゲーム。

画像は結構ごもっともな事を言う敵幹部

 つまり5年前の違和感の正体は「成長したという話の筈が、相手へ及ぼせる事含めて全然変わらないとはどういう事だ?」と言語化が出来る。実はレベルそのものには意味がなく、「エピックやユニークアイテムの刻印」が1%単位でちょっとずつ上昇しており、最終的に相手を2倍速で倒せるようになる。だが「レベルは装備更新の為にしか存在」と気づくまでは単なる下手くそな負荷にしか見えていなかった、というわけだ。

 ここまで未プレイの人が読むと「何も変わらんの?」と思うかも知れないが、実際のオデッセイは使えるガジェットが増えたり、必殺技や与えるデバフの持続時間が増えたり、中盤以降特定行動を更に尖らせるチューンが出来るようになってより「吹き飛ばし方」が増えていく。

 が、それは「様々な吹き飛ばし方」が増えていくだけで、結局ゲームクリア迄で「全敵のステルス一撃死」は叶わなかった。そこだけが「アサシンクリード」として惜しい。砦を突っ切って篝火を破壊して、ついでに敵のエリート兵を見つからずに刺して!とやった所で敵の体力がミリで残ったり全然刺さらなかったりするのである。そこで「周りの敵が気付くまでに仕留めきれるか」が重要で、まあそここそアサシンの醍醐味でもあるがここだけが最後までもったいないなと感じた次第だ。

最高のオデッセイと、やっぱり余計な神話要素

鳴り物入りアトランティスだが出来は正直すこぶる悪い

 物語やその体験についてだが、率直に言って非常に面白かった。ユニーク武器以外全ての価値を均すことで全てのクエストから砦の攻略まで楽しめたし、遺跡で子どもの話を聞いただけの所から迷宮の奥で待つミノタウロス戦になるのも最高だ。メインストーリーもリニアな所はリニア、そして待つべき所はどっしりと構えて待ってくれるから横道に逸れる事に違和感はまったく無い。今作はまだエデンの果実が失われきらない時代という事もあり「あの単眼の巨人は空想でなくエデンの果実で暴走した人だった!」とやることで整合を取っている。また同様に道端のクエストが発展すると「この島を覆う不穏な影…それは悪い組織の仕業だった!」とメインクエストでも対立する組織幹部だったりして既存シリーズの要素もゲーム内の要素も綺麗につながっている。

 特にDLCの「最初の刃の遺産」の出来は白眉で、ゲーム内でうだうだ言っている組織は神の名の下でポリス間戦争を続ける権力者に対していよいよ破滅したがっている人らに過ぎず、「世界平和」の為に動いている古き結社との戦いが描かれている。自身の身体に流れるレオニダス王の血脈、握り続けてきたレオニダスの槍が一組の男女を出会わせ、主人公は親となり、そして信条を託す…というのは前述のバイオウェアやベセスダ方式のロールプレイにガッツリのってかなり楽しめた。例えオデッセイしかアサシンクリードをやる予定のない人にも是非やっていただきたい。

 翻ってアトランティス編は正直蛇足と言って良い。紆余曲折あってオーパーツを手に入れた主人公がオーパーツ利用者に相応しくなって貰うために仮想のエリュシオン・冥府・アトランティスに出向くという話で、メタ的には現生人類と先史人類の付き合い方や交流が描かれるものではある。が、歴史のイベントに介入も出来ないし、やることは現生人類の支配者・敵対者として振る舞う先史人類の小間使いが主だ。何より「ギリシャ神話に出てくる神ってこういう物言いや振る舞いするよね~」の体験に留まってしまっており、そもそもが仮想な時点で「介入」が大きくそがれるのも良くない。

ポイベー関連イベントでボロ泣きしました。

 もちろん、良いところはある。整合性を無視してまでやっただけあり、本編開始時には既に故人であったレオニダス王に「じいちゃん」と呼びかけるパートでは泣きそうになったし、本編の中で失われてしまった命を改めてエリュシオンに送り出す所ではボロッボロ泣いた。死んでもなお悪を行うものには鉄槌を振り下ろし、そして番人として神話の大英雄に会うことも出来た。まあ番人関連めちゃくちゃ薄味なのでここは全く納得は出来ていないけど。

 これらの物語は「オデッセイ」であるが故、どのタイミングで楽しんでも良い。いや、楽しめるように出来ている。話も報酬も均したからこそ、何もかもが振り返れば「旅」になるように出来ているのだ。

この野郎3名のつながり本当に好き

 そして物語はヴァルハラ発売記念のクエストで幕を閉じる。「何故神話やオーパーツは現代に向け失われ続けたのか。テンプル騎士団と奪い合いをしなければならないほど貴重になったのは、古代ギリシャのワシ使いが2400年かけてずっと破壊し続けてきたから。彼/彼女は誰よりも偉大なアサシンで、その信条に基づき2400年のオデッセイを今も続けていたから…という非常にロマンチックな終わり方だ。

 アサシンクリードオデッセイはアサシンでなく「ワシ使い」のオデッセイとして編まれながら、本編でなく度重なるDLCで2年かけて「暗殺者の信条:オデッセイ」として完成した。このオデッセイが一番好きでも良いし、オデッセイだけ好きと言うのも無理はない。このゲームは「旅と出会う人々、その中で少しだけ強くなる自分」を楽しめる、唯一無二のゲームだからだ。

 次回はヴァルハラの予定でしたがUBISOFT+(有料サブスク)で何故かDL出来ず、サポートに連絡しても5月末から丸2週間放置されているので別のゲームをお届けする予定です。

世間が騒がしいのでアサシンクリードオリジンズの2周目をやってきた

どうでも良いけど何でカタカナのフォントが月姫なんだろう。

 アサシンクリードはシンジケートから大きく「古代三部作」と呼ばれるシリーズで転換点を迎えた。どう転換したかというと「武器やキャラにレベルの概念を導入した」のである。更に攻撃も親指側のボタンでなく弱攻撃と強攻撃を人差し指側で行うソウルライク変更、それらは周囲とどう比較される要素でどういうゲームだったのか…

 何やら世間が騒がしいので、2周目をプレイしてきた。ので記事にする。

 

cr.hatenablog.com

おまたせしました。5年ぶりのアサシンクリード記事です。

 

オープンワールドにおける劇薬、レベル制

各クエストにも推奨Lvが書いてある

 正直な所、アサシンクリードにはレベル制のようなものは旧来からあった。それはアクションのアンロックであり、ガジェット類の使用回数増加であったり、ちょっといい武器だったりした。アクションが解禁されることで難易度が下がり、より大勢相手に立ち回れるゲームになっていき、ステルスもちょっと軟化する。そういうゲームだった。

 そしてそのゲームにレベル制を導入し、レベル間の傾斜を強めに設定したオリジンズはどうなったかと言うと…まず背後や空中からの暗殺で敵が即死しなくなってしまった。相手を誘導して一人ずつ潰していくパズルが解けるならどんだけ危険でもOKだった所が、レベルを上げてブレードを強化しないと刺さらないのである。故に「レベルが足りないから進めない。なぜならレベルが足りないから」となってしまった。

 そしてだいたい2回も攻撃を受ければこちらは死ぬし、相手の体力も1000とか2000という単位であるのに通るダメージが10となる。極めてゲーム的な理由で相手に攻撃が通らず打倒できない状況が形成されるようになってしまった。

 が、これの理由も考察は出来る。オリジンズ退屈な「◯◯チャレンジ」系を全て廃止し、ゲーム内のロケーション目標―例えば部隊長を倒せとか隠し宝箱を見つけろとか―とサブクエスト、そしてメインクエストのみでゲームを構成している。未だオープンワールドゲームでもなかなかない割り切りだ。

 しかしこうするとプレイヤー側の変化はレベル無しではあまり訪れなくなる。オープンワールドで自由な移動が出来るということは、固定のクエストのような豪華報酬は渡せないからだ。「見逃しても良い場所の戯れ」からしか得られない報酬は出せない。このクエストをやる、このピラミッドの謎を解いたから得られる。そうでないとクエスト側の価値が下がるからだ。

 とは言えロケーション間の旅や戦闘自体にも報酬を渡したい。そこで出てくるのがレベルと強化だ。本作ではドロップした武器にもレベルが設けてあり、敵を倒すと現在のレベルに応じたそれなりの武器が手に入る。分解して強化素材にしてもいいし、武器を売っても良いし、本当に使ってもよい。これがクエスト進行でキャラレベルが上がる限り無限に繰り返される。そうやって「動いた分成長してる感」は永遠に続く。例えアクションやガジェット類のアンロック類が全部開いたとしても。

 ゆるやかな無限の上昇やプレイ時間への報酬が設定できるのと引き換えに発生するものもある。最も顕著なのは「クエストをやらないと話が進まない」という義務感からくるクエストの「消化」だ。経験値をぶら下げられて渋々遊ぶクエストほどせっかく用意したのに勿体ないこともない。そのクエストもFallout龍が如くの品質を保ててるならいいが、悲しいことに舞台が間もなく滅ぶエジプトなので全体的に辛気臭く、話のパターンも多いとは言えない。ちょっとトンデモをやった後にヤクザ殴っていい話にしてシメ、の龍が如くの方が申し訳ないが面白い程度だ。

そしてソウルなバトル部は?

象に襲われるカエサルと主人公バエク

 刷新されたバトル要素は弱攻撃で切り込む→そのうち防御されるから強攻撃で崩す→相手からの攻撃が来たら盾カウンターまたはカウンター可能武器で流す。が全て。これが基本解説という話でなくこれが全て。これに回避も付いてくる。問題は、とわざわざ書くほどでもないがきっちり「ソウルライク」の為にところどころきっちり死ぬ多数とのバトルや必殺技を幾度か叩き込む必要のある「硬い敵」が出てくる。龍が如くで言うと0のカツアゲ君みたいなのが10人いる。レベルを揃えてもなお硬い。

 個人的には一度カウンター動作が入ってから強攻撃を振るう「ヘビークラブ」が最初から最後まで有用であったが、逆に手数勝負や盾カウンター前提武器だとまま「敵がまあ硬いソウルライク」のままなので一つ一つのバトルが重く感じる。これは銃もVATSも無いオープンワールドの調整なのだからある種当たり前ではあるが、旧作(特に直前のシンジケート)を期待すると渋く感じる。が、エルデンリング後なら「ソウルライクってこんなもんだよね」と時間の経過も有り飲み下せる程度の出来だ。

専門家も関わる極めて歴史考証の正確なゲームなのでビームが出る

 ソウルライクってこうだろ!と言わんばかりにビームが撃たれたり、デスハイエナが予兆表示有りで飛んできたり、矢がめちゃくちゃ飛んでくるのを回避回避回避して光るコアに矢を撃ち込む戦闘も完備だ。アサシンクリードは極めて歴史考証の正確なゲームなので女神セクメトがビームを撃つ。何もおかしいことはない。いいね?

旧作や「あの年」に出てしまったゲームとの比較で。

 さて、少しずつフレーバーやゲーム内経済の話に触れていきたい。アサシンクリードオリジンズは紀元前のプトレマイオス朝末期。良く知られるピラミッドの建設からも2000年経ち、アレキサンダー大王に征服されてからもまた長く、エジプトの辺境からラクダを走らせれば徐々にギリシャ式の建物が顔を出し、アレクサンドリアはすっかりヘレニズムに染まっている。息子を殺された主人公のバエクは復讐に身を投じるが…というのがメインストーリーの流れだ。

画像は暗殺対象に騙されて埋められたバエク

 プトレマイオス朝末期のエジプトを旅する。という雰囲気の再現は素晴らしい。砂漠に輝く白いピラミッド(なおコレはいわゆる映えの為のウソで、建造2000年のピラミッドがこうなワケがない)も美しければ、すっかりギリシャ風になった都市群も荘厳。ナイル川を上りながら右手に人々の生活を眺める…という観光の部分は非常に良くできている。 

ポンペイウス劇場。終盤でカエサル暗殺の為に訪れる場所。

 話は古代エジプトに留まらず、海戦や古代ローマまで広がる。ロケーションとしての広がりはシリーズ随一と言って良い。言っていいが「個々のポイント間の距離」だとか「ゲーム上意味を持たされた場所か」という事を考えると話が変わる。幾ら縮尺を変えたとは言え、ゲーム内を500mとか1000mとか3000mとか移動するのだ。その移動の傍らで強化アイテムを落とすローマ兵や獣を見かけはする。ランダム戦闘があるからいいでしょとは私には言えない。特にマップ南側は下手すれば無くても困らないだろうに。

 そして「プトレマイオス朝末期のエジプト」という事は、作中で暗躍する架空組織がなかろうが滅びかけの国だ。厳しいことを言うが、ゲームの5割は砂漠と岩山、3割はヤシの木と嘆く人々とごちゃごちゃした貧しい町並み、2割が見所とナイル川で出来ている。8割の部分があまり口に合わなかった。本作の人々はサブクエストであれメインクエストであれ、砂漠に飲まれ国もローマに飲まれ行く今を憂いて神に縋る思いで罪を重ねている。つまり言ってしまえば「それぞれ祈り方が違い、間違えただけ」とも言える。彼らは信じていたのだ…となるにはバリエーションが少なすぎ、徐々に感慨には浸れ無くなってしまった。

 例えば直前のアサシンクリードシンジケートは産業革命真っ最中のロンドンで、ロケーションも一つ一つ見応えがあり、そのロンドンで「暗躍するちょっと偉い人」が相手なのでエピソードにも「確かに一理ある…だが殺す!」となっていた。ここが「エジプトがさ…神がさ…」と異口同音になってしまうのが勿体なかった。

 これは同じく「ポイント巡り」のゲームであるゼルダの伝説ブレスオブザワイルドとの比較になるが、ブレスオブザワイルドはロケーションが変化に富む。祠が単調なのは否めないが、ここにウツシエの記憶達と各カースガノンとの戦いに至るまでの各地方でのエピソードや魅力的な登場人物達との積み重ねがある。

 更に続けると、ブレスオブザワイルドではロケーションに辿り着けばコログがいた。祠のクリア数で体力・スタミナが増え、マスターソードが手に入る。残るは蛮族の鎧(攻撃力アップ)と古代兵装だけだ。実は祠・神殿解放・マスターソード・特殊装備以外あのゲームで永続的な変化を与えるものは無い。無いが常に変化があるように感じられた。それは武器やアイテムが尽く活動の中で失われるものだったからだ。

 それらのゲームと比較すると、クエストや暗殺も固くて淡白、物語もエンジンがかかるまでは国に仕え義に燃える戦士としての人助け、ロケーションもまあ地味かコピペ…というのは否めないのがアサシンクリードオリジンズである。

が。それも中盤までの話だ。

物語はアサシンの誕生の為に加速する。

 

憧れのアレキサンダー大王の墓を見て大喜びカエサル

 ちっとも息子の仇に辿り着けず、クレオパトラに言われるがまま殺してもまだ辿り着けず、お前はファラオのメジャイ(戦士)なのだからとクレオパトラカエサルに逢わせてからのオリジンズは一気に加速する。

燃えるアレクサンドリア湾岸

 あのファロス灯台に陣取るローマ兵を蹴散らして緑の炎を上げ、象から逃げ、大海戦を行って…という「かつての」アサシンクリードで行われたリニアなメインクエストが帰ってくる。

 あのカエサルの側近でさえ人々を裏から操ろうとする「結社」の一員であり、先史文明人のオーパーツはバエクの故郷にも眠っていた!あの日「結社」の襲撃があったのはオーパーツがあったからだった!と話が進む。しかして再度の襲撃を受けたのは「怒りに任せ、身を晒し戦士として戦っていたから」で、それで故郷の人々を巻き込んで死なせてしまった。

愛する人の夫である事も、かつて親だった事も、国も全て捨てる。

 だからバエクは全てを葬り去った後、信条に基づき「隠れし者」となる。ソウルライクなバトルも「強敵との真正面の殴り合い」の演出として機能し、物語としっかり噛み合っていく。相手の攻撃を盾やカウンターで捌き、徹底的に叩きのめす。終盤になり、プレイヤーがシステムを理解し、そしてバエクが「暗殺者でなくてはならない」事を理解してから、アサシンクリードオリジンズは明確に「アサシンクリード」になっていった。

息子の形見すら投げ捨てバエクは去る。
妻であったアヤが拾い上げると砂浜に残ったのは…

 発売から7年が経ち、2周目を終えた。
 アサシンクリードオリジンズは劇薬であるレベル制を導入し、事実それはゲーム内で作用こそしていてもどこか不自由を感じさせる指向性が感じられる。滅びかけのエジプトは、言ってみれば「似たような悲しみ」に溢れている。それでもなお体験は唯一無二であるし、何より「暗殺者になる」為の物語や旅の品質が低いわけではない。

 前作や同年のタイトル、そしてスタイルを模倣した作品を勘案すると「それらを踏まえたものが出せなかった」という言い方が正しいだろう。それでも単体で見てみれば、「暗殺者の信条(アサシンズクリード)」の誕生、そして古代エジプトの謎を巡る作品として私は嫌いにはなれない。

 「カエサル暗殺の一太刀目」を浴びせられるゲームなんて、今後無いだろうからね。

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当時は重いゲームでしたが、RTX4080でなら思いっきりブン回りました。合わないかもしれない作品ではありますが、気が向いたら遊んでみて下さい。